前回に関して、ちょっと補足。

 ニコルさんの、ティルトローター機操縦免許について
だが。

 ・・・・よく読んでみると、彼が「免許を持っている」
とは一言も書かれていませんねえ?

 操縦技術を持っていることと、何らかの公的機関に
認められた免許を持っていることとは、全く別の問題で
ある。
 技術を身につけるだけなら、別に戸籍なんか関係なく
できることだ。正式な免許を取るには、当然必要になるが。

 ・・・・ニコルさん。ひょっとして・・・・無免許
ですか? まさか、まさかね・・・?

 それ以前に、民間人が勝手に自家用機を飛ばしていい
のか(許可申請とかいるんじゃないのか? いや、詳し
くは知らないけど、「航空の危険を生じさせる罪」って
あるよ、確か)
リンク貼ってみたけど、なんか違いましたスイマセン。
この中でニコルさんが引っかかるとすれば
「飛行機内に危険物を積載させた罪」かな?
とか、ありゃあ領空侵犯じゃないのか
とかいう疑問もあるんだけど、もう言わないことにします。

不許可ならたしかに領空侵犯ですね;^^
ただ2巻でニコルが辰っつぁんに「イタリア政府への働きかけサンキュー」
みたいな事言ってましたので、そのとき特例で許可出してもらったのかな
・・と車田世界にマジフォローいれてみたりする。


   iii.<Resurrection>  意味「蘇生」

  1.

 いきなり吹っ飛ばされて火山灰に埋まっている星矢
ちゃんから第3章スタート。
 この辺の豪快なボコられ方が彼らしくて何とも言えない。

 さらに彼に対するアグリオスの台詞。

「こんなところまでふっ飛んだか」
「山にぶちあたらなければ、地中海を越えてアフリカまで飛んでいたな」
「クラッグプレスを受けてなお、へらず口が利けるのは、ほめてやろう」
                    (121ページ)


 ・・・・何て念入りにお約束な台詞のオンパレード。
 星矢と闘う相手はこの手の台詞を口にしなければなら
ないと決まっているのだろうか?
 あまりのベタさに私は感動すら覚えた。偉いぞアグリオス。

 でも、シチリアからアフリカまで飛ばすくらいなら
大したことではない。
 以前白銀の、えーと名前何だったっけか・・・あの
ほらカラスの・・・・・烏座のくせにカラスの航続距離や
行動範囲を無視する人・・・そうジャミアン!
 あいつなんか一輝兄さん日本からギリシアまで飛ば
されたらしいから。

 ついでに言うと、あんたが相手にしてる星矢ちゃんは、
ちょっとボコった方が強くなる体質なのだ。「死なない
程度に痛めつける」ということが非常に難しい、難儀な
奴なのである(一輝の場合、死んでも生き返ってくるので
もはや問題が別次元なのだが)。
あと紫龍も

 ・・・・さらに、余裕かましてると無敵の万能奇跡誘発
呪文・「燃えろオレの小宇宙!!」によって
一発大逆転、と・・・。

 しかし。ちょっとだけツッコミ。

 死を賭さねば、勝利はない。
 破壊の根本を極めてしまったがゆえに、聖闘士の戦いは、
つねに死ととなり合わせなのだ。
                (128ページ)

 ・・・・非常にかっこいい響きではあるのだが、そう
かなあ・・・・。
 毎回毎回こんな瀕死になってる奴って、こいつらだけの
ような気がするけど。特に星矢紫龍
 星矢は特攻隊員型の性格が災いしている(と言うか・・・
一言で言って、戦い方がまずい)
のだろうが、紫龍の場合は
本人が望んで瀕死になりたがってる節が見受けられる
んだが。お前大丈夫か。
 青銅諸君・・・大変だね。


 いずれにせよ、星矢VSアグリオス、星矢の戦いの
基本パターンを忠実になぞった、実に素晴らしい戦いで
ありましたことよ・・・(詠嘆)。

 いやほんと、ここまでお約束通りだと、安心して読め
ますわ。


 それにしても、戦闘シーンはツッコミ入れるのも難しい。
ならやめろという話ではあるのだが、多分浜崎先生も
苦労なさったことだろう。

 原作と読み比べれば文字通り一目瞭然だが、背景・
効果音・コマ割等々の、マンガという媒体ならではの
豊かな視覚的表現技術を駆使した戦闘シーンを、文章で
再現しようと思ったらそれはもう至難の業なのである


 私は一度、原作のとある戦い(どれかは秘密)を文章に
書き起こしてみようとして、あまりの難しさに脳内の
構成の時点であっさり諦めたことがあるのだ・・・って、
それは私がヘボいからか・・・。
ゐゐゑ、それは文章書きの永遠の課題難題ですと自分をなぐさめてみる。


   2.

 瞬VSトアス、第二ラウンド。戦いは嫌いだ嫌いだと
言いながら自分の戦闘能力自体には自信たっぷりな瞬と、
相当クセのありそうな性格が素敵なトアス、一筋縄では
いかない同士の対戦は台詞が多くて面白い。

 というわけで、引用多いです。


「(前略)……こういう言いかたは好きじゃないけど、
これで無意味な戦いは終わりにしましょう」 
「無意味?」
「ぼくは……」瞬は言いよどんだ。
「僕は、たとえ敵であっても、むやみに相手を傷つけたくない」
「……本気で言っているのか? 私をからかっているの
だとしたら、きみは乙女のような顔に似ず、よほど性格が
悪いな」
             (131ページ)


 ・・・・トアスさんの微妙発言、再び。
「乙女のような顔」ってあんた。

 瞬の相手で強い奴は、彼の容姿について何かコメント
しなければならない
と決まっているのだろうか。
 しかし、アフロディーテの「少女のような顔」、ソレ
ントの「清楚な顔」、どちらも発言者の顔が顔だけに
「お前ら人のこと言えんのか」な台詞ではあるが、変な
含みを感じる言い方ではなかった。
 女顔を揶揄するニュアンスはあるにしても、純粋に
「顔に似合わず根性あるな」と言っているだけである。
しかし、これは・・・


 ・・・何が微妙って、「乙女」だな。「少女のよう」
なら単に女顔というだけの意味合いだが、「乙女のよう」
というと・・・・逆説的にセクシュアルな(ジェンダー
も含む)ニュアンスが含まれることにならないか? 
少なくとも、私はそう感じた。

 「少女」はただ単に「年若い女性」だが、「乙女」は違う。
 「年若い女子」という意味もあるのだが、一般的に
乙女と言えば「未婚の女性」「処女」の意味で使う。
 すなわち、男を知らない清らかな娘である。ちなみに、
特に年齢や容姿の設定があるわけではなくても、枕詞の
ように「若く美しい」というイメージがつきまとう。

 この辺語り出すとキリがなくなるのだが、思い切り
大雑把にまとめると、要するに「乙女」とは「汚れなき
存在」であると同時に「汚れうる存在」であり
(「乙女」の清らかさとは、「汚される」ことが前提の
ものだと思うのは私だけ?)、その危うさ(と言うか
二面性、かな)故に神性を帯びるものであると言える。
生け贄にもなれば巫女にもなるわけだ。


 ちょっと無関係な方向に話が広がってしまったが、
ただの一言でここまで私に考察(妄想と正直に言うように)
させたトアス、恐るべし。


 しかし、ここでの彼の主張自体はものすごく納得できる、
と言うかむしろとても真っ当である。
 ここは戦場の真っ只中。そんな場所で無意味な戦いだの
傷つけたくないだの、だったら帰れという話ではないだろ
うか。本当に嫌なら最初から来なければいいのだ。

 さらによく見ると、瞬は決して「傷つきたくない」とは
言わない。言うのは必ず「傷つけたくない」である。
 ましてや彼は、この手の台詞を一旦自分の実力を見せ
つけてから口にするのだ。

 すなわちその心は、
「ここで僕が本気出したら負けるのはあんただよ。怪我
したくなかったらおとなしくしててね」。


 うっわ嫌な奴〜!! トアスが怒るの当たり前だ!!
(・・・誤解のなきように。緑は瞬最愛でございます。
いやマジで)

 瞬・・・君の平和主義は尊いとは思うが、いい加減
主張するTPOを学んでくれたまえ。


 続いて引用第二弾。長いです。

「では理由があれば、きみは敵を殺せるのか」
「……それは」
「”大丈夫だ。きみは正しいよ”」
「え?」
「そんなふうに誰かに背中を押してもらわなくては、
きみは戦えないのか? 他人の言葉を借りて自己肯定
しなくては、きみは戦えないのか?」
「…………」
「惰弱だ。虫酸がはしる。言ったはずだ……ギガスと
聖闘士が殺し合うのに、大義などいらない。正義など
いらない」
「悪鬼か……羅刹のように、ただ戦えと?」
「つくづく、きみは自分の行動に言い訳が多いよ。アンド
ロメダ」
「っ……!」
「私には、きみの悩みを聞いてあげる趣味はない。ねんねの
坊や。きみの思いやりにあふれた言葉は、私の心をひどく
傷つけた」
               (131〜132ページ)


 よっしゃよく言った、よく言ってくれた!!(肩バシバシ)

 そうよ私も前々からこの男には一遍言ってやらにゃ
ならんと思っていたのよ!! こいつがこの手の言動を
するたびに、「ツッコんでやれよ敵!!」と何度思った
ことか!!
(私事だが、私は自作の小説でアフロディーテに同様の
台詞を言わせたことがある(ギガマキ発売以前に書いた
ものです)。・・・やっぱりみんな思うんだな、うん)


 ・・・・誤解のなきように。緑は本当に瞬ファンです。

今を去ること十(ピーッ)年、遊びに行った従兄弟の家で
たまたま読んだ単行本第10巻(念のため、処女宮戦・
天秤宮・天蠍宮戦の巻です)・・・

 あの運命の出逢いでの一目惚れ以来、十(ピーッ)年の
時が流れても、最愛キャラは変わらず彼です。

 あの頃はアフロディーテやデスマスクに惚れるなんて
考えてもいなかったけれど、ここまでツッコミ入れ倒し
ながら読むようになるなんて夢にも思わなかったけれど、
これだけ自分が変わっても彼への愛は不変なのです!!

 ただ・・・・何というか、愛そのものは不変でも愛し方が
激しく変わったというか・・・・冷静な目で見られるように
なったというか・・・いや、やっぱりどんなに好きなキャラ
でもツッコむべきところはツッコまんと、ね。


 というわけで、もう完全にトアスの方に肩入れしながら
読んでいる自分に気付き、ちょっと戦慄した。この辺りに
なるともはや「ねんねの坊や」程度は問題発言の範疇にも
入れていない。恐るべし。


 ついでに、ちょっと前後してしまうが、彼の「きみは
戦い、私を殺せ。私は戦い、きみを殺す───互いの肉を
食いちぎり、血をすすって生き残れ。それでいい。ほかに、
どんな美辞麗句がいる?」
という台詞には結構しびれた。

 戦いに「正義」なんか持ち込まれるより、この方がよほど
すっきりしていて良い、と思う私は間違っているだろうか?
 まあ・・・これは確かに、「人間の」戦いの理屈ではない
のは確かだけど。



 続いて、さらに引用。

「聖闘士も生身の人間だ。体内の血の、三分の一を失えば
死に至る……さあ。スティグマを全身に受けた以上、
きみはあと数分で、おだやかな苦痛のなかで死ぬ。
こういう言いかたは好きではないが」

 がくりと両膝を落とした瞬に、トアスは優しく告げた。

「これで無意味な戦いは終わりにしましょう」
               (132ページ)


 よっしゃもっと言ってやれ!!

 ・・・緑は本当に瞬ファンです。何ならステュクスに
誓います。信じてお願い。

 いやその、原作では瞬のこの、甘いようで実はものすごく
傲慢な「平和主義的主張」にちゃんとツッコんでくれた
敵がいなかったから・・・・
 「ふざけるな」程度のことしかみんな言ってくれない
んだもん(もっとも、カロンには貫き通して勝ったけど)。
 冥界でのカノンの説教は感動的だったが、あれは敵の
立場ではなかったし。欲求不満だったんですよう。
 ここまで言ってくれたのは君が初めてだ、トアス!! 
あーすっきりした!! ありがとう!! いやマジで!!


 が、この後の瞬の台詞はかなりかっこいいからやっぱり
嬉しかった。そんなこと決心するなら、敵の前でごちゃ
ごちゃ悩む前にしろとは言いたくなるが。

 ついでに、「ぼくは、もう泣き虫じゃないからね」には、
「嘘吐けッ!!」と叫ぶことが義務であるように思います
ファンとして。
 トアスさんに言ってやって欲しかったけど、瞬ちゃん
この話では一度も泣いてないんだよな。ちっ。
(いい加減にしなさい)


 そしてやっと真面目に闘う気になった(・・・・)瞬に
対する、トアスの台詞。

「それにしても……きみは強いのか? 弱いのか? 
どちらだアンドロメダ? 乙女のような惰弱さを見せれば、
戦士のような勇気をも見せる。きみの心はあまりに情緒
不安定で、不器用にねじくれて、まったく理解できない」
            (137ページ)


 また言ったよ、乙女・・・・。そんなに好きなの?

 この人、本気でおいしいなあ。「まったく理解できない」
と言いながら、初対面でここまで瞬の特異なキャラを掴んで
いるなんて・・・・
 ちなみに、鎖を破壊した後の「これできみは翼をもがれた
小鳥も同然」
という台詞には、もう何も言いません。
(だいぶ慣れたらしい)
 

 で───鎖を破壊されてしまったとなると次に出るのは
青銅最強の必殺技・ネビュラストリーム&ネビュラストーム
か!! と思ったんだけど、そうは問屋が卸さなかった。
 まあ考えてみればこんなに早くに出すわけないわな、
あれだけ出し惜しみしてる(としか思えん)のに。


 そして。

 いつの間にか───
 黒灰色の山肌が、うっすらと白く薄化粧していた。

「灰……いや、これは……」

 指先にふれた小さなほこりのようなものは、たちまち溶けて
消えた。

「この夏のシチリアに、ひとひらの雪とは……」 
エトナにゃ、降るよ

 霜が、山肌を覆っていく。
 足もとから冷気が這い上がってくる。
 しんしんと、氷の結晶はさらに粒が大きくなり、数を
増して降り積もりはじめた。

「まやかしではない」

 声。
 思いがけず、雪の舞いはじめた荒涼たる火山の野に、
冷たい光沢を放つクールホワイトの聖衣をまとった、
彼は現れた。
               (138〜139ページ)



 氷河・・・・。
 瞬のピンチに、ここまでカッコつけて演出過剰に登場
しておいて一輝じゃないなんて・・・とも一瞬思ったの
だが、考えてみれば紫龍もまだ出てきていないのに一輝が
出るわけがない。そちらの方がよほど前代未聞だ。
 これはもはや常識。


 ちなみにこの後の文章、非常に楽しかったので続けて
引用します。

 翼のレリーフが彫られた胸甲と、白鳥の飾りがついた
羽根兜のマスク。すべてが曲面で構成された聖衣は、
軽やかな印象を与える。
               (140ページ)

 さらっと頭のアヒル(違)については流した、と・・・。
 しかし、「すべてが曲面」って、あのショルダーパーツは
むしろ、パフスリーブに見えるんだが。まあいいけど。


 そして氷河は───
 そんな白鳥のイメージが重なる、物語の挿絵に描かれ
ているような、貴公子だった。
               (140ページ)


 ・・・・・ぷっ・・・・・・



 子供でもなく、青年でもない。ほんのひとときの少年
しか持ち得ない輝きは、ともすれば孤高になりがちで、
薄く光の張った青い瞳は、人を突き放すような表情を
しながら、どことなく寂しげだ。
               (140ページ)



 ・・・・ぷっ・・・・・・・!! ははははは!!
 誰のことだこれ!!

 ・・・いや、笑っちゃいかん、笑っちゃ・・・。
 そうだ、氷河って顔だけならばっちり美形だったんだ、
そういえば(ファンの方すみませんごめんなさい)。
 でも、瞬の描写も大概すごかったけど、これは・・・・
星矢はごく普通だったように思うんだが。浜崎先生、
美形の描写には凝られるのでしょうか。

 それにしても、氷河の瞳ってやっぱり青なんですね。
ロシアと日本のハーフで金髪碧眼って、あんまりないと
思うんだけど(註1)。


 しかしここでの氷河は、別人じゃないかと思うほど
本当にクールであった。ああ、考えてみれば敵がギガス
ならマーマや師匠や兄弟子が出てくる心配はないしね
(とんでもない伏兵はいたけどな・・・)。
 身内が絡まなければ彼は冷静でいられるらしいからな。

 というわけで、ものすごくあっさりケリ付けてくれた
ので何だか拍子抜け・・・というか、瞬の立場は?と
ちょっと思ったり。
 いや、瞬がピンチになったのはしょーもない論争を
していたからなんだが・・・あ、そうか。瞬がほんとに
本気出したら、あっさり止め刺しちゃうからか。


 で・・・・。その後の氷河と瞬の会話。

「かなり血を失っているな。その体では動けまい。ここで
休んでいろ」
「ううん、大丈夫」
「お前が自分を『大丈夫』と言うくらい、信じてはいけ
ない言葉はないがな……ふっ」
「あは」
                (145ページ)


 ・・・・何ですかこれは。なぁんなんですかこれは。
 ここ読みながら、私の脳裏を「需要と供給」という
言葉が過ぎった。あ、邪推だったらごめん遊ばせ。
でも、これは・・・・・・これは・・・・・まあ・・・
いいんだけどとりあえず、瞬、「あは」じゃねぇだろと
心から思う・・・


 ところで。
「アンドロメダのチェーンは、聖衣そのものを破壊され
ない限り、異次元から供出され続ける」(145ページ)

って・・・そんな設定になってたの?!
 そういえば平気で異次元空間超えていく鎖だったけど、
そこまでトンデモな代物だったの?! びっくりしました、
とっても。

この理屈でいくと、アフロディーテの薔薇も聖衣が破壊されない限り
異次元から提供されるシロモノだったのでしょーか?
なんか、サメの歯みたいですね(笑)


次回、いよいよ「盟の章」ラスト一本ファイトだオロナミンCです☆