3.

 本格的戦闘シーン、紫龍VS“百頭龍”のラドン第二
ラウンド。

 とりあえず、突発的兄弟愛劇場はようやく閉幕。最後
まで付き合ってくれてありがとうラドンさん。結構いい人
(人?)よね。

 ・・・が、ラドンが盟を無事(いや無事じゃないが)
行かせたのは、どうやら<ドラゴン>の聖闘士である
紫龍と戦ってみたかったからであるようなので、ちょっ
と問題が別かも。
 どうでもいいが「遊色の星を集めた雲を浮かべた金剛衣」
とは具体的にどのような色なのか、個人的にとても知り
たい。何色だ遊色って。
オパールのように光の差し込む角度によって色が変化すること
らしいですへぇへぇへぇ。玉虫系ってこと?


 そして。引用行きます。

(圧倒的な……ここまで強大な小宇宙を持った敵は、
過去に何度もない……! しかも、この感じは……?)
                 (158ページ)


 自分とそっくりで「鏡を見るような」相手の小宇宙を、
素で「強大」とか「圧倒的」とか思う辺り紫龍って・・・。
 まあいいけど。


 この後展開するラドンの「龍の星」論は、正直いまいち
納得しづらい。まあ確かに龍座の神話はそうだけど。
「同じ星を宿命に持ちながら異なる神を頂いた」という
言い方はかっこいいからまあ許すか(何様)。

 しかし、理屈はともかくそんな理由で盟を行かせるのは
如何なものか・・・?
 この場でより重要なのは、圧倒的に紫龍より盟である。
彼がいなければテュポンの封印が出来ないということを、
紫龍は敵の面前でバラしているのだ。(しつこく指摘)
 これをラドンの立場から見ると、盟さえいなければ
テュポンの封印=アテナ側の最大の目的は果たせない、
となるわけで・・・。

 星の因縁なんかにこだわってないで、最大のキー
パーソンにちゃんと止めを刺すのがラドンの義務では
なかったのだろうか。
 いくら満身創痍で瀕死でも、盟はあの青銅たちと半分は
同じ血を引く兄弟なのである。この世の者とは思えぬ
(文字通り)、ゴキブリどころかクマムシ(註1)と
良い勝負の生命力は、おそらく父方の遺伝なのだ。畏る
べし、城戸光政。そして、あえて見逃すなど愚の骨頂。

 こいつらを痛めつけただけで油断して、後で泣きを見た
敵は星の数だというのに・・・って、まあ、ラドンは
知らないだろうけどね。


 さらにもういちいち指摘する気にもなれないが、やっぱり
成立していないふたりの会話。引用行きます。

「龍座の聖闘士よ……どうやら貴様は、目が見えぬよう
だな。そんな者を戦士として、未だに聖衣を与えている
とは、アテナとは」
「この紫龍の目が見えぬことを、侮るなら侮るがいい。
だが───」
「ふ、ふ、ふ」
「アテナを侮辱することは許さん! この紫龍、盲目の
闇におびえ、戦士の誇りを捨てるくらいなら、潔く死を
選ぶ!」
                (160ページ)


 ・・・・紫龍ってこういうキャラだったっけ・・・? 
戦士の誇り・・・初めて聞いたぞ、そんな言葉。でもって
なんで一人称が「この紫龍」で確定してるんだお前。
 あと、「死を選ぶ」なんて言わずに春麗ちゃんをもう
ちょっと大事にしたげなさい。

 しかしそれにしても、今更目が見えない程度のことを
言うか、ラドンも。虚しくはないか。ちなみに君が怒る
のも筋違いだぞ紫龍。最初は自分で潰したんだし。

 引用続き。

「<神々の意志>を宿した神の戦いとは、ただ一つきりの
宇宙の真理を求める、絶対の戦いだ。そして紫龍よ……
ただ一つきりの星の宿命を負う戦士は、この世に、ひと
りでいい」
「オレとお前は、同じ星のもとに生まれた……」
「紫龍よ……龍座の聖闘士よ」
「ラドン……龍の名を持つギガスよ……」

                (160ページ)


 あのちょっと待って。
 何それただ一つきりの宇宙の真理って。聞いたこと
ないぞそんなこと!!
 多神教の世界観にそんなもん、ありですか? 宇宙の
真理なんて、アテナもポセイドンもハーデスも、一言も
口にしてなかったぞ。どっから湧いて出た。
 て言うか、言いたいことはお互いただ単に「お前は
存在自体がムカつくから殺す」ってだけだと思う(意訳
しすぎですか?)んだが、何をふたりして長々無意味に
語り合ってますか。しかも何をシンクロしてますか。
同じ星を頂くだけあって、実は仲良しか君たちは。

 後、紫龍がドラゴンの盾についてうんちく垂れてました
が、その盾が「最強」だという噂はガセだと知らない
読者は多分いないと思いますマル・・・と。


 ・・・ああ。これでようやく本当に本格的戦闘シーンに
入れる。前振り長いなこいつら・・・

 そして紫龍の廬山龍飛翔。どうでも良いけどあれって
要するに単なる体当たり・・・よね。そして、一撃目は
効かないのがお約束お約束。

 ちなみに。

「父からもらい受けし、この力、この肉体。貴様ごとき
人間には、ふれることさえできるものか」
                (162ページ)


 ラドン氏の物言いが、紫龍のそれをなんとなーく彷彿と
させるものであると思うのは私だけではないと思う。
たかが攻撃ふさいだだけでこのえらそーな口の利き方。
いちいち語りたがる雰囲気。さすが同じ星を頂くだけ
あって、絶対紫龍とメンタリティが似てるぞ!

 このちょっと前のラドンの台詞。

 「私と貴様とは、いわば同じ星を宿命に持ちながら、
異なる神を頂いた───この上ない宿敵ということだ」
                (159ページ)


 ・・・それって・・・要するに近親憎悪ってことですか?
 虚しくなってきたぞ、ちょっと。


 ラドンの必殺技・“ポリオルキア”の決め台詞は大変
かっこいい。「滅びに包まれよ」───きゃあ。身も蓋も
なくてステキ! そして何となくデスマスクっぽいよ
イメージ的に・・・!!(そうか?)

 でもって、かかると闇の中で「深海魚のような姿の、
尾まで口の裂けた像の牙を生やした闇の魔龍」なる物体に
噛み砕かれる幻影が見えるのだそうで。

 精神攻撃系の技らしいが、悪趣味さでは一輝の鳳凰
幻魔拳には圧倒的に負けると思われるので多分大丈夫。
 というか、鳳凰幻魔拳って、敵個人個人に合わせて
それぞれ一番突かれたくない弱点を丹念に突けるみたい
だし。悪質だわ。
 いずれにせよ、氷河も那智もあの出版コードギリギリな
スプラッタから無事復活したんだし、今更この程度で
ビビってるようでは聖闘士は勤まらないだろう。

 ・・・まあ、この手の精神攻撃に一番弱そうなのは
紫龍だけど。
 星矢は無神経・・・もとい鈍い・・・いやその大人物?
だし(星矢ファンの皆様ごめんなさいごめんなさい)、
氷河はマーマがいればどうにかなるし、瞬も兄さんが以下
同文だしついでにあいつは結構図太いし、一輝に至っては
何をかいわんやだし。
 こういう堅物の優等生タイプが、一番精神面で脆いと
いうのはむしろお約束。サガと同じだね。ちょっとヤバい
結論が出てしまった。がんばれ、紫龍・・・!!
 

 ・・・だがしかし。
 ファンの皆様はもちろんご存じですね。そう、彼には
「滅び」の呪文なんかでは小揺るぎもしない最強の盾が
あるのです。
 もちろん、ガセ大バレのドラゴンの盾なんかじゃあり
ませんよ。あんなヤワなもん、足元にも及びません。

 この辺りで、すでに「来るぞ、来るぞ」とわくわく
待ちかまえていた方手を挙げて! もちろん私もだ!


 引用行きます。これはもはや義務!!

「確かに、人は脆い……肉体も、その心はより脆い。
だが───人は、人によって強くなれる。友のため、
信じる者のため、戦うことができる」
「ふ、ふ、ふ」
「そういった人の心は……ラドンよ! ただテュポンの
“畏れ”に従うギガスよりも、遙かに強いのだ!」

 
ばっ!
 紫龍は、龍座の聖衣を
脱ぎ捨てた。
                (165ページ)



 よっしゃ来た───!!!(爆笑)

 これこそドラゴン紫龍最大の盾にして武器(笑)、
脱衣!!
 ここでは特に描写されていないけど、聖衣だけでなく
アンダーウェアもきっちり破り捨てているに三千点!!

 やってくださいましたわね浜崎先生!!! あー、
笑った笑った。ごめん、紫龍。
 いや、これってひょっとして編集部からの指示? 
「紫龍は勝つためには脱がなければならない」って、
決まってるみたいだし。原作でも、彼が脱がずに倒せた
相手ってほとんど雑魚ばっかりだったし。

 しかし、いい加減にしとかんと聖衣にすねられて
見放されるよ? どっかの誰かみたいに。

 さらに、

「貴様の攻撃が、精神を攻撃するものとわかった以上、
聖衣は不要」
               (165ページ)


 ・・・などと理屈を付けていらっしゃるが、どう考えても
何とか脱ぐ理由をこじつけてようにしか思えませんな。
 でもって、そんなに見せたいのかその背中の昇龍・・・・。

 で、ここまできたらもう後は決まったようなものなので、
割とあっさり廬山昇龍覇炸裂。ラドンさんは可哀想に、
怪しい化け物の実態を現す暇もなく倒されてしまいました
とさ。


 だがしかし、ここにまた不穏な空気。
 盟の小宇宙が感じられない───ひどく不安なネタを
振って、紫龍は力尽きてしまうのだった。


           ※


 さて、ご兄弟が頑張っている間、盟ちゃんも頑張って
テュポンの元を目指していました。
 ファンの皆様、この辺りから、タイトルを『聖闘士盟』
に脳内変換して読みましょう。はーい☆


 最初に行き会ったのは、キマイラと戦って倒れていた
星矢。

 ・・・この時彼らがいた位置は、上(陥没した洞窟の
入り口に近い方)から順に、
上手く落盤に巻き込まれずにすんだ紫龍
→滑落の途中で横穴に避難した氷河
→底まで落ちて生き埋めになりかけた星矢、となって
いると思われるのだが・・・この順番が彼らの要領の
良さの順位をそのまま表しているようだがそれはとも
かく、紫龍と別れて次に会うのは氷河じゃないのかなと
ちょっと思ったのだが・・・

 いや、いいです、そんな細かいことは。感動的なシーン
なんです。ええ。すみません。

 しかし。星矢のこの台詞。

「もとはといえば、お前が……ひとりで、テュポンの
アジトに乗り込もうなんて無茶を───」
                 (169ページ)


 なんてもっともなツッコミを・・・!! よく言った
星矢! その台詞、アテナにもとっくりと言って聞かせて
やってくれ!
 でもまあ、盟が突っ走らなくても瞬が囚われてるから、
遅かれ早かれみんなで乗り込むことになったと思うけどな。

 ところで、星矢ちゃん、語彙が微妙にアレですね。
 「アジト」て。何となく昔懐かしい仮面ヒーローが出て
くるような子供向け特撮番組の悪役を彷彿とさせる言葉
なんだけど。いや、私だけかこんなこと考えるの?

 
 倒れた星矢に「死ぬなよ」とだけ告げ、振り返らずに
走り去る盟───どっかで見たと思ったらこれ、十二宮編も
大詰めの、サガ戦のときにいきなり復活した一輝と同じ
だわー。
 お兄ちゃんキャラの宿命なのか、全くパターンがそっくり
なのだが、台詞が違うところがちょっと泣ける。一輝は
「さらば兄弟」だった。硬派度(いや、むしろカッコつけ度)
の差であろうか。

 そして・・・星矢もまた、盟の小宇宙を感じられない
ことに戸惑う。
 どうでもいいけどここの描写、素直に読むと星矢が
死んだみたいに取れるんだが・・・。


             ※


 お次は氷河のところに辿り着いた盟。やっぱり順序が
逆な気がするんだが・・・いや、もう言いません。

 で、氷河は「己の技量の未熟さゆえ」とかって傷を
恥じるような奴でしたかのう・・・。
 いい歳して(緑の感覚では、男で人前で泣いて良いのは
年齢が一桁までです)恥ずかしげもなく人前で号泣する男
なので、その辺の感覚はぶっ飛んでる人だとばかり思って
たんだが。
 ああ、そうか。純粋に聖闘士としての力にはそういう
真っ当なプライドもあるけど、精神面の成長に関してだけ
ぶっ飛んでるのか。なるほど。


 唐突に、盟は訊く。

「氷河……お前は、オレたちの父のことを、どう思って
いる」
 (中略)
「城戸光政という男は、お前にとって、なんだ」
               (171ページ)


 氷河の答えが「憎んでいた」と過去形であるところが
なんとも泣ける。しかしそれに続けて「マーマ」にも
きっちり言及してくれた辺り、変わってなくて嬉しいわよ
氷河・・・!!

 しかし、こんな唐突かつ微妙な質問に、ちゃんと素直に
答えてくれるか氷河。「なぜお前がそんなことを訊く?」
と聞き返されても不思議じゃない気がするのだが、
ひょっとして彼は、盟の素性のこと何か知っていたのか?

 考えてみれば、あのメンバーの中で母親に育てられた
ことが確認されているのは氷河ひとり。お母さんから
何か聞いていた可能性はあるのかも。

 ・・・盟の、万感の想いを込めた「ありがとう」が
胸に迫るのですよ。突っ込んでる場合じゃないよ自分。

 そして、氷河に対しても盟の最後の言葉は
「死ぬなよ」。泣けますな・・・。


            ※


 さあ、真打ち、バカ神ことテュポン登場です。
 相変わらず言うてることがワケ分からしません。


「吾がいればよい。それがギガスの生きた証だ」
              (174ページ)



 ・・・・だったらひとりで生きていってくれと心から
言いたいギガスさんもいらっしゃったのでは?
 これだけ好き放題、意味不明に暴れたあげく、勝手に
自己完結されたら彼らの立場はどうなるの。可哀想すぎる
ぞ。


 そして・・・・ついに、盟はバカの元に辿り着きます。