ii.<Blood>

   1.

 ユーリの葬儀のシーンから、第二章スタート。
 ああ、シリアス展開はツッコミレビューが書き辛い・・・
(最初からツッコまんでよろしい)

 しかし───「この地上が平和であることが、なにより
聖闘士の生きた証だ」と言われると・・・彼らの言う
「地上の愛」とか「平和」って具体的にどういうものなの
だろうと、いつも思ってしまう。

 現実問題として、この地球上に全く戦争がなかった
時期なんてあるのか? あるとしても奇跡のように短い、
僅かな期間ではないの?

 アテナと聖闘士たちが守っているものって、いったい
何なんだろう……。
 彼らが戦う相手は外から地上全体を狙う「神」勢力で
あって、地上に住んでいる人間同士の戦いにはノータッチ
なのだろうか?
 まあ、国にはそれぞれ侵されざるべき主権というものが
ある以上、それは当たり前だろうけど……その辺の整合を
どう付けるつもりでいらっしゃるのですか、アテナ?


 さて、筆者が似合わぬマジなことを考えている間に、
盟ちゃんはひとりで突っ走り行動に出てしまうのでした・・・。

 なんで・・・アテナがおとなしくなったと思ったら
同じ行動を受け継ぐ奴が出てくるんだろう・・・
 これは、お約束なのか? そうなのか・・・?

  2.

 忘れられていたかのような───と言うかむしろ読者が
存在を忘れていたであろう青銅二軍クインテッド(・・・ごめん)
の登場に、正直緑は真剣に驚いた。
 彼らまでちゃんと出てくるなんて・・・! 浜崎先生、
マイナーキャラに愛の手をありがとうございます!!

 市っちゃんはちゃんと「ざんす」って言ってるしね!
 しかし、上司(ニコル)に対してもそう言っていると
いうことは、あの言葉遣いは彼にとって、ちゃんとポリ
シーに基づくものなのね。すごいなあ、市。

 そして、ここまできて未だに出てきていない一輝って、
一体何?!(笑) いいけどね、もう。それでこそ彼よ。


 で。<地炎>の結界の中に赴くため、星矢たちの聖衣に
血を与えてくださるアテナ。
 ・・・それ、ハーデスとの戦いのとき、既にもらって
なかったっけ?
 おまけにそのせいで君たちの聖衣はなんだか神聖衣に
まで進化しちゃったんじゃなかったっけ?

 時間が経ったら効果が切れるのか、アテナの血? 
妙な薬(「ヤク」と読む類の)みたいですね。ほら、生物だし

 でもって、そんなもんのためにわざわざ小箱に収めた
宝石のように輝く短剣(・・・サガがアテナ殺害未遂の
時に使った例の凶器じゃあるまいな)なんか持ってきて
る場合か。
 手首を切れれば良いんなら、そこらのカッターナイフ
でも使いなさい!
 それをやると絵的にアテナが昨今流行り(嫌な世の中
ですね)のリストカッターみたいになっちゃうからダメ?
 てゆーか、手首の動脈なんか切ったらシャレにならない罠;^^
 これはちゃんと注射器で動脈から採決して、辰巳は脱脂綿当ててくざさい。



 そして。さりげなくほのめかされる盟の運命・・・
髪の毛座の宿命が、なんとも哀しいのだった。

 あと、アテナ、ここで一番がんばっているのは貴鬼くん
です。もっとちゃんといたわってあげてください。


  3.

 <テュポエウスの住処>。

 囚われの姫君・アンドロメダ瞬
(しかしなんでこんな役回りがナチュラルに似合うかなこの子は)
に対し、いきなりいろいろな意味でやばい台詞を吐くバカ神もとい
テュポン。

 いきなり、一番強烈なやつからきますよー。


   はい、深呼吸してー

   すってー


   はいてー



  はい!そこで止めて!!








「“畏れ”にふるえているのか。
     若く美しいアンドロメダ」
 (95ページ)









 
 お前もか?! 

 お前もかテュポン?!!
 おいっ、『ジュリアス・シーザー』の台詞が脳裏を
駆けめぐったぞ!! Et tu Brute……!!
 本気で一瞬脳味噌凍ったんですがねぇ?! テュポン
までそれもんの台詞を吐くか?!
 あんた方は私のそうでなくても動作不良気味な脳に
止めを刺す気ですか?! 勘弁してくれ!!


 ・・・と思ったら、この発言は『盟の章』で食われた
トアスの記憶から来たものであったらしい・・・。
 トアスさん・・・死んだ後までこんなところで祟らないで
ください!! 瞬が鎖に縛られて動けない(ある特殊な
世界で王道とされる状況、か?)状態でこの台詞は、本気で
シャレにならないくらいやばいから!つか、トアスってめだちたがりーだったしぃ

 で、瞬はここでテュポンを「みずからの渦に雲を呑み
込んでいく嵐」
と感じているのだが、考えてみれば彼も
似たような技を使うんですな。
 ネビュラストーム・・・あれは逆に何もかも吹っ飛ばす
タイプの技のようだが、使ってみたらいかが? さすがに、
仮にも腐っても「神」相手には無理かなあ?


 そして、さらに続くテュポンの問題発言。
 トアスよりストレートにアレな感じです。(どんな感じだ)

「わかるぞアンドロメダ。そなたは、ただの人間ではない」
   (略)
「いずれか名のある神の器であろう。オリンポスの神々の、
いずれか───エトナ山で、少しばかり食らったそなたの
血と小宇宙の味が……忘れられぬ。これほどの贄は、今生、
望めまい」
                         (96ページ)


 瞬ちゃん・・・モテるなあ、神様に。しかもなんだか
微妙な感じに。
 さすが、神様認定の「この世で最も清らかな心の持ち主
・・・なんだかなあ。本人は多分嬉しくなかろうが。

 この台詞に対する反応から見て、瞬はおそらくその
意味をちゃんと理解していると思われる。ハーデス様は
正確には「オリンポス十二神」には入らないが、あ、そだった
明らかにその一族だし。

 というか、ここでテュポンが無体な真似をしようとした
場合、やはりハーデスが降臨して、冥界の王と嵐の化身の
壮絶なる大喧嘩になったのだろうか?
 巻き込まれる瞬の身が非常に心配ではあるが、すっごく
見たいぞ(待たんか)。
 でもって、ハーデス圧勝に一票・・・(いや、やっぱり
格が違うと思うの)


 つーかこの辺の描写、全体に何とも言えない微妙な
雰囲気が・・・


 一言で言うと
妄想ウェルカムというか
腐女子御用達というかその・・・・
 ・・・・・・大変失礼をいたしました。しました。



 エキドナの設定がなかなかエグいことになってて良い
感じ。
 神話では、テュポンが封印された後も生き残り我が子で
あるオルトロスとの間にも子どもを作っている(えーと、
スフィンクスとかがそうじゃなかったっけ)彼女だが、
こちらでは随分気の毒な身の上になっている模様。

 ちなみにラドン・キマイラ・オルトロスの三人(・・・
と数えて良いものかどうか)の母親も、もちろんエキドナ
っすよ。
 なんで同じ親から産まれてここまで見た目が色々になる
んだろう。どういう遺伝子持ってるんだろ、こいつらって・・・


  4.

 ・・・・そしてお前はエキドナも知らんのか星矢!!
ハーデスも、アルテミスも・・・・・・知らなかった・・・・から・・・・

 小説を書く場合の技術的な手法として、こういう
「何も知らなくて質問してくれるキャラクター」を出す
ことによって、説明台詞を無理なくさせるというやり方が
あるのは確かなんだが・・・もしかして、星矢ちゃんは
そのためにここまで物知らずにされているのでしょーか?
 だとしたら、不憫だ。うん


 そして、ニコルさんは「ギガスにも星の宿命がある」
というようなことを言っているのだが。

 うーん、確かに聖闘士だけでなく海闘士や冥闘士の
方々もそれぞれの鎧(っていうの?)に宿った運命みた
いなものはありそうだった(というか、海闘士や冥闘士
こそそうだったのでは?)が・・・このギガスの場合は
どうなんだろう?
 この場合、彼らは星もへったくれもなく「神話の怪物」
そのものの存在であるような気がする。
 どうなのニコルさん?


 でも、彼のこの台詞はかっこよかった。

「天球とは、すべての小宇宙とすべての<神々の意志>
さえ溶かし込む、この宇宙の器なのだから」
               (102ページ)


 うーん、深いなあ。大宇宙の前には人も神も小さいもの
なのね・・・って、この理屈で行くと一番偉いのはウラ
ヌス様ということに? なるのでしょーか?


 ついでに蛇足。
 怪物を星座にするのは、ニコルが言うように御霊信仰の
ような発想(思いっきり日本製の発想では?)から出てきた
ことなのだろうか?
 ギリシア神話から星座になった人や動物は、大抵非常な
功があった英雄か、大変苦労した人(神様に苦労させられた
とも言う)だと思うんだが。

 ───ちなみに、後から出てくる龍座のラドンは、確かに
テュポンの子で本来はオリンポスの敵の立場だが、ヘスペ
リデスの園の黄金の林檎の樹(ゼウスとヘラの結婚祝いに
ガイアが贈ったもの)を守っていたその功績を称えて星座に
なったのではなかったか?蟹座と似ているのよ(汗)
 怪物とは言え、オリンポスの神々のいわば家来状態だった
わけである。あんまり一概には言えないと思うですよ。


 そして───相変わらず派手なパフォーマンスが好きな
バカのおかげで、今度は地面が陥没してしまいます! 
しかし、本当にやることが無意味に派手なお方、豪快だわ。

 まあ、冷静に考えると、地上への実質的な被害はポセイ
ドンの水害の方が、見た目のインパクトはハーデスの
日食の方が遙かに大きかったと思うんだけどね。エトナ山
の噴火も含めて。所詮、テュポンは脇役でしょーか?(失礼)
バカ神の技は大気汚染と日光遮断ですから、インパクトは
無いけど後からかなーりジワジワ来るかと。。。陰険やな;^^

 
5.
 
円形劇場が数個も収まるほどの広範囲の落盤・・・
ここで東京ドーム何個分とか言わない辺りがさすが聖闘士
星矢、俗世に染まぬ現代のギリシア神話ですなあ・・・
って、そういう問題じゃねぇ。

 普通、そんなもんに巻き込まれたら、地上への脱出も
何も即死確実だろうに・・・死なないんだなあ、こいつらは。
 まあ、落盤程度なら考えてみればミスティでも起こせた
ようなもんなので、こんなところで死んでいては彼に
申し訳が立たないのかもしれない。そんなもん、立たさ
なくて良いような気もするが・・・

 ・・・いえその。別に、死ねと言っているわけではない
のですよ。ただ、何となく今更ながらにしみじみとして
しまっただけで。

 さて、落盤は聖闘士たちを分断するための策であった
(「ギガスの」か、「神」すなわち「作者の」かは敢えて
問わない)ようなのだが。
 
 まず出てくるのが氷河。冷静にギガスの罠を警戒して
おります。
 本当に一体何があってこの子はこんなにクールになった
んでしょうねぇ?! 銀河戦争のときの市戦以来くらいの
冷静さではありませんこと? 

 さらに、落下途中に「無我夢中で横穴に飛び込んだ」
ですと。
 万有引力の法則に従って自由落下の最中、どうやった
らそんなことが出来るのか、誰か理科音痴の私に教えて
ください。コスモで解決(・∀・) b★

 一緒に落ちている他の何か(岩とか仲間とか)を思い
っきり蹴って横向きの力を得る、くらいしか思いつかん
が、それでいいの?
 まあ、土と一緒に斜面を滑落するような形で落ち
ているならどうにかなるのかな・・・?


 まあ物理的な矛盾なんかはこの際どうでもよろしい。
ようやく本格的な戦闘シーン、いかにも『星矢』な
シーンに突入なのだから!!

 ついに、敵のギガスその1登場。そして氷河との会話。
 引用行きます。


「大地の洞、か」

 アリマ火山の地下に、このような広大な空間があったとは。
氷河は驚いた。

「その聖衣……ただの青銅聖衣ではないな」
 声。
 獣のうなるような、低い、聞き取りにくい声だ。

「わかるのか、貴様に」

 氷河は敵の姿をとらえた。
 ギガスを。

「この地下神殿に張られた<地炎>の結界のなかで、
その聖衣は“畏れ”をはねのけた」
「テュポンは、ここか」
「アテナの血の加護か」
「白鳥座、キグナスの氷河」
「“魔双犬”のオルトロス」



 ・・・・・・・・・

 何か? ギガスと聖闘士ってのは、会話をまともに成立
させちゃいかんのか?
 そう言えば『盟の章』でも、会話らしい会話をしてた
のって瞬とトアスくらいだったけど、アテナとテュポン
もこんなもんだったけど、それにしても何なのこれは。

 お互い言いたいことを言ってるだけ。相手の言うこと
全然聞いてない。かと思えば思い出したように名乗って
みたり・・・何なんだ君たちは。
ギガマについて、正直この台詞の書き方はかなり気になりました;^^

 そう・・・これは原始の戦い。<聖戦>ですらない
<生存競争>。
 種の生存を賭けた、決して歩み寄ることの出来ない
───文字通り不倶戴天の敵同士の、宿命の戦い。

 正義も愛も全ては無意味な言葉遊びに過ぎない───
ならば会話など必要ない。そういうことなのだろうか。

 ただ単に聖闘士もギガスも人の言うことを聞かない
人材が揃ってる
ってだけのことではないよう、切に願う
次第である。
でも…アテナもバカ神も…トップ自体が人の言うこと…げふげふ!!


 さて、オルトロス。
 えーと、確か、ヘラクレスの冒険の割と後の方で出て
きた奴だな。確認確認・・・

 ・・・確認しました。ヘラクレスの「十二の難行」の
十番目に、ゲリュオンの牡牛の番犬として登場するのが
オルトロス。
 この牛を手に入れるのが冒険の内容で、オルトロス
はあっさり殺されてしまってます。

 ちなみにゲリュオンは、あのクリュサオルの息子・・・
てことは、ペガサスの甥ですな。
 ポセイドンの孫(売るほどいる)でもあるわけだが、
そういうのに使われてたオルトロスって・・・あ、あん
まり怖くないなあ(笑)。ごめんオルトロス。

 でもまあ、繰り返しになるけどテュポンの子どもたちは、
オルトロスだけでなくラドンもケルベロスもオリンポス
系の神々に使われてたわけだ。
 ケルベロスなんかほんとにペット扱いっぽいし。(註1)

 神話の時代には、子どもの代ではそれほど対立して
なかったのかも。ネメアの獅子やヒュドラは野放しに
れて暴れてたけど。
 まあ、テュポンに比べれば子どもたちは格段に小粒だ
が・・・

 少なくとも、親子の情愛や兄弟愛は全くなかった模様
である。
 テュポンとエキドナの子どもたちが、父親の元に一致
団結してオリンポスに立ち向かっていたら、話は随分
と違ってきたと思う。(((゚Д゚;)))))ブルブルガタガタ

 とまあそういったことはともかく、きっぱり
「では、貴様は敵だ」と言い切る氷河。
結構<生存競争>の論理にはまってる?(笑)

 しかし、茶化しまくっていて何だが、ここの氷河は
冗談抜きでかっこいいです、はい。