キレた盟を止める紫龍。このときの台詞からすると、
盟ちゃん結構本気だったんだろうか、ユーリさんのこと・・・

 それはともかく、ここで「敵を捕らえて尋問」という
発想が出てくるのもなんだか新鮮だった。
 いやあ、原作では「基本戦略:とにかく敵陣に突っ込
んで出てきた奴をぶち倒す」的戦いしか出てこなかった
からさ・・・こうやって敵の情報を得るなんてことも
出来たんだねえ君たち。

 ・・・が。

「ギガスよ。貴様らの神、テュポンはどこだ」
 紫龍は質した。
「きひッ……きひひッ」
「なにを笑う」
「あの御方が真の力を発揮すれば、聖闘士はもとより、
アテナさえ敵ではない」
 パラスは血の泡を吹きながら放言した。
「なにを……」
「あの御方の真の力の前には、オリンポスの大神ゼウス
さえ一度は逃げたのだからな!」
「テュポンの目的はなんだ……真の力? 地上の支配と
いうなら、なぜ、大地を死に陥れるような噴火を起こす」
「人間などに……いや、われらギガスでさえ、あの御方の
考えには及ばぬ」
                 (79〜80ページ)


 ああ・・・会話噛み合ってないし・・・(笑)
 て言うかパラス、テュポンに「考え」なんて立派な
もん、無いんだって。あいつは何も考えずに行き当たり
ばったりで行動してるだけだって、いい加減気付けよ。

 さらに引用。

「そのような神を……崇め、従うというのか? ギガス
は……!」
「崇め、信じることが力を生じる!」
「そんなものは間違っている。ただ恐怖に縛る神など!
 安らぎを与えぬ信仰など!」
                 (80ページ)


 紫龍、お前もいい加減会話が成立してないことに気付け。
て言うか、こんな相手に説教してどうするんだよ考えようよ
TPOを・・・!!

 そして、そんな正義の怒りに燃える紫龍氏にちょいと
冷ややかなツッコミを。

 おたくの崇めるアテナ様は、ご幼少のみぎり乗馬鞭
振り回して「誰か馬になりなさい」とか口走っておられ
ましたなあ。今現在も、しょっちゅう考えなしに暴走しちゃ
周囲に迷惑をかけ倒しておいでのよう(そして反省の色なし)
ですなあ。
 て言うか、安らぎって何? 戦いの女神ってのは、
安らぎとやらを与えてくれる存在なのか? 年中闘わさ
れてるだけと違うのか君たちは?
 毎度可愛い彼女を振り捨てて戦いに赴いてる紫龍、
あんたアテナに夢見すぎ・・・
 ・・・・冷静に考えて、テュポンとどっちが嫌です
かね? 私はどっちもどっちだと思うなー、神様なんて
所詮こんなモンなんじゃないのかなー。


 しかし、神様の名前を呼べばそれでオッケーとは随分と
簡単な自殺法だ。楽でなくても良いんだが。

 ちょっと違うけど、真の名を云々というのは日本でも
あったよね。真名ってやつ。それを知ればその人を支配
できるとか何とかいう、言霊信仰に通じる考え方だそうだ。
 古事記だか万葉集だか忘れたが、確か女性に対して
「あなたの名前を教えてください、私も名乗りましょう」
という歌があって、今の感覚だとナンパでもしてる程度に
思えるけど実はれっきとしたプロポーズの歌なのだ・・・
という記述をどこかで読んだ記憶がある。名前を教えると
いうのは、相手に自分の全てを委ねることなのだと。
 日本でも中国でも、昔は人の名前を呼ぶことはなかった
(だから「いみな」というのです)。
 上の人が下の人の名前を呼ぶのは良いんだけど、下の人が
上の人の名前を呼ぶことは絶対に許されなかった。官職名で
呼ぶんですね、古典文学なんか読んでると一発で分かる。
実名での記述なんて滅多にない。
 名前というのは単なる記号とも取れるけれど、その人
そのものでもあるというわけで・・・この辺掘り下げすぎ
ると私の手に負えなくなる(すんません半端にかじって
まして)のでこの辺で逃げますが、結構面白い設定だと思う。

 でも、名前呼んだり呼ばれたりしただけで死ぬような
信仰は、心の底から嫌です。


 そして、全てが終わった後駆け付けてくるニコルさん
・・・・ごめん、ここで「遅いッ!!」と言いたくなった
私を許してください。
 盟と紫龍は巨蟹宮から図書館に駆け付けた。位置関係は
特に記述されていないが、多分図書館は十二宮の外にあると
思われる。だから教皇の間もしくはアテナ神殿から来た
のであろうニコルより早いのは当然だろう。
 しかし、それにしたってタイムラグありすぎ。ニコル
さん、パラスの気配に気付いてから何してたんだろう。

 
 ここで先程の疑問の答えが明らかになった。盟が初めて
使うはずの超特殊な武器を扱えたのは、聖衣の導きに
よるものであったらしい。
 ・・・・どう反応すれば良いものか・・・それって、
盟ちゃんの実力とは違うということなのだろうか?
 この記述を素直に読むと、盟は聖衣に操られていた
ように思えるのだが。微妙だなあ。「斬糸」なんて専門
用語まで、聖衣が教えてくれたのかしら。
 師匠から聖衣に関する知識をある程度もらってそうな
他の人々と違い、盟は本当に何も知らずにこの聖衣を
着たはずなのだが。
 似たような怪しい武器でも、瞬の鎖は一応、初期から
ちゃんと自分の意志で操っていたようだったが・・・って、
ああっそう言えばあの鎖、勝手に動いて字書いたりするんだった!!

 ・・・もういい。分からん、こいつらのやることは!!

 と、ヤケを起こしかけたところで第二章に続く!! 
しかし今回長かった!!

 ・・・・盟ちゃんのいろんな顔が見られてお得ではあった
かな?(小声)



   (註1)色悪・三枚目

 歌舞伎用語。
 色悪とは役柄を指す言葉で、要するに「美形の悪役」
のこと。
 広辞苑を見たら、例として「東海道四谷怪談」の田宮
伊右衛門が挙げられていた・・・・。星矢キャラでこの
イメージに一番近いのは、個人的な見解だが五老峰に
初登場したときのデスマスクなのだが。

 三枚目とは、もう一般名詞になっているが、俳優で
滑稽な役柄を演じる人のこと。役柄そのものを指して
言う場合も。劇場表の絵看板の三枚目に、お笑い担当の
役者の絵姿が出たことから出た言葉。言うまでもなく、
ハーデス編冒頭のデスマスクである。ほんに器用なお方。

 真面目な話、デスマスクに出来ない役は、多分女形
(これも本来は、役柄ではなく女性役を演じる男優のこと)
だけではないだろうか・・・・それはむしろ、やって
欲しくない、ですね。

 しかし自分、いい加減ネタとして註釈書くのやめなさい。
 

   (註2)髪の毛座
 学名Coma、略符Com。
 赤経12時45分、赤緯+2、面積386.48平方度。
20時南中5月28日、南中高度S80度。
 この座標の意味するところは、5月28日の夜8時、
真南を向いて視線を上方80度の方向に向けたら、その
視線と天球の交差点周辺が髪の毛座であるということです。
実行してみよう来年の春(仲間募集中)

 設定者はティコ・ブラーエ。16世紀デンマークの
天文学者。
 ・・・すなわちこの星座は、16世紀に設定されたもの
である。古のギガントマキアはどうなるんだ・・・との
疑問が脳裏を激しく過ぎるが、ご安心を。
 「髪の毛座」としてはっきり定められたのは後世の
ことだけれど、紀元前3世紀頃からエラトステネスらに
よって「ベレニケの髪」として認められていたらしい
ので。よかったよかった。
 いずれにしてもこれを「女性の髪の毛」と見た想像力は、
凄まじいの一言に尽きると思うが。

 この辺りは星の非常に少ないところで、ぱっと見本当に
何も見えないが、よく見れば条件の良いところなら
Mel111散開星団が見える・・・だろう。多分。
 そして髪の毛座銀河団。「銀河の窓」である。「宇宙
の覗き窓」とも言う。かっこいい。響きがめちゃくちゃ
かっこいい。
 作中盟が言及している通り、髪の毛座の方面には銀河系の
北極があり(ちなみに銀河系の中心は射手座方向にあるん
だよねーいやー深い)、星が少ないため遠くの銀河が見通
せるのである。
 「星なき星座」である代わりに、双眼鏡や望遠鏡で
見るととってもにぎやかな星座なのだ。いいなあ、一見
類型的キャラクターに見えて実はものすごい厚みと奥深さを
隠し持っていた盟ちゃんにぴったりだ・・・(かなり真剣)

 髪の毛座に関する神話は次の通り。
 エジプト王プトレマイオス3世の妃ベレニケは、それは
それは美しい髪の持ち主でした。
 あるとき王が遠征に出ることになり、無事を願った彼女は
女神アフロディーテに祈ります。

「王が勝って帰ってくれるなら、わたくしのこの髪を捧げます」

 ・・・・交換条件である辺りがなかなか態度でかい
ですね。しかも自分の髪がそれだけの願いの代償になる
と思ってるわけだから、すごい自信。気を付けましょう
下手すると化け物にされますよー。

 まあとにかくこの祈りは聞き届けられ、王は無事に凱旋。
ベレニケは約束通り美しい髪を切って神に捧げました。
 その美しさと心の清さを認めたゼウスは、ベレニケの髪を
天に上げて星座としたのでした。めでたしめでたし。
 というわけで、髪の毛座は「自己犠牲」の象徴とされる
星座なのです。

 しかし、私は不思議でならない。何故にアフロディーテ
なのか。力一杯管轄違いではないのか?
 美と愛の女神に戦勝祈願。アルテミスに恋愛成就とか、
アレスに受験合格とか、ゼウスに家内安全とか、それ
くらいの見当違いに思えるのだが・・・よく願いが叶った
ねえ。よかったねえ。

 そしてもうひとつ、この星座、星図では大抵後ろを
向いた女性の頭部の姿で描かれているのである。
 つまり、見た感じ切り落とした髪の毛ではなく、頭部に
生えている形そのまんま。
 これを素直に受け取ると、ベレニケは髪を「切った」
というより「剃った」ことになるのではなかろうか。
 だって、普通にばっさり切っただけならあんな形には
ならないよね。あれ完全にヅラだよねえ?!(ヅラ言うな)
 ・・・・・髪なんて切ったってまた伸びるんだから
犠牲ってほどでもないじゃん・・・・と思ったこともある
のだが、ごめんなさい私が悪うございました。
 いやあ、さすがにそこまでの覚悟はそうそうできんわ、
(仮にも)女として。ベレニケ様、あなたの自己犠牲は
立派です!!


  (註3)サガの反乱
 13年前のシオン教皇殺害に始まって<十二宮の戦い>
に終わる、一連の聖域内乱。
 主犯は双子座のサガだが、少なくとも蟹座のデスマスク
・山羊座のシュラ・魚座のアフロディーテの三人の黄金
聖闘士が事情を承知で荷担していた(偽教皇の正体まで
知っていたかどうかは、実は不明なのだが)。

 本当のところ、原作の全エピソード中、アテナ陣営に
最も多くの損害を与えたのはこの件である。
 対ポセイドン戦では、アテナ側に死者はゼロ(アルデ
バラン生きてんだもん)。負傷者が8名。内訳は黄金一名
(アルデバラン)、白銀一名(シャイナ)、青銅5名
(星矢、紫龍、氷河、瞬、一輝)、候補生一名(貴鬼)
である。
 また、戦場は海底なので建造物等の被害もゼロだった。
ただし、病院を襲撃したソレントが病院関係者を殺傷して
いる可能性はあるが。

 対ハーデス戦では、黄金7名(ムウ、アルデバラン、
アイオリア、シャカ、童虎、ミロ、カノン)と白銀一名
(オルフェ)が死亡。
 白銀2名(魔鈴、シャイナ)と青銅10名(星矢、
紫龍、氷河、瞬、一輝、邪武、那智、市、檄、蛮)、
候補生一名(貴鬼)が負傷。死者8名、負傷者13名
(星矢の安否によってはこの数字が変動する可能性あり)
に加え、聖域の建造物も十二宮を中心にかなり破壊された。

 が、サガの反乱による被害はそんなもんではすまない。
何しろ期間が13年の長きに渡るため、その間に聖域
内部だけではなく周辺にも迷惑が及んでいる。

 死者だけでも、教皇シオンを始め、黄金が6名(サガ、
デスマスク、アイオロス、シュラ、カミュ、アフロディーテ)。
内サガ本人と共犯者の三名はまあ致し方あるまい(少なく
ともデスマスクとアフロディーテは、悔いなさそう)が、
アイオロスは完全に被害者。濡れ衣まで着せられるし。
 カミュに関しては、どうもそういうことを何も考えて
いなかった感があるのだが・・・
 そして白銀13名(ミスティ、モーゼス、アステリオン、
バベル、ジャミアン、カペラ、ダンテ、アルゴル、アルゲ
ティ、ディオ、シリウス、トレミー、ダイダロス)。
・・・というか、白銀聖闘士って、ここで出てきて散って
いった(笑)奴ら以外ほとんど出てないのね。
 その他、サガの入浴を覗いて(違)惨殺された雑兵が
いた。アルデバランの証言が本当なら、似たような経緯で
殺された奴がもっといるはず。ああそれから、忘れちゃ
いけないカシオス・・・

 ほら見ろ。一番少なく見積もっても、聖域内部だけで
死者22名だ。青銅から死者が出てないのは、あの5人が
揃って異常に打たれ強かったからだぞ(約一名、そういう
レベルを超越した奴も含まれるが・・・)

 そして。まあ、暗黒聖闘士8名とジャンゴとかギルティ
とかに関しては、直接関係ない(あれはどっちかという
と、城戸光政が悪い)から大目に見てやるとしても・・・
これはごまかせまい。城戸光政の子ども達。
 直接サガが悪いわけではないが、やはり責任の一端は
負うべきであろう。圧倒的に親父が悪いが。
 光政によって世界中に送り込まれた百人の子ども達の
うち、聖闘士になって戻った10人を除く90人は「行方
不明」とされていた。生死すらも不明の状態なのでこれを
全員死者として数えるわけにはいくまい。しかし、あの
修行の過酷さから考えて、死んでいる可能性が非常に
高いことは否定できないだろう。
 聖衣を持って帰れなくても、盟のように雑兵として
生きている者が他にいるのかもしれないが・・・半数が
そうだとして、45名もの罪もない子ども達が未来ある
命を散らしたことになる。うわー罪深い。

 こんだけやれば、絶対悪だろうがそうでなかろうが、
言い訳にも何にもならないと思う。というか、関係ない
だろそんなこと。
 普通の世間一般の犯罪者だって、「絶対的な悪」
なんて奴はめったにいないんだしね。ご本人は心から
分かっていたでしょうが。


 (註4)連獅子
 歌舞伎の演目のひとつ。元は能で、義太夫にもあります
が。いずれにしても、文殊菩薩の使いである獅子の親子の
愛情を描いたお話。
 で、ここで言うのはこの獅子の衣装・・・というか
鬘。「頭」(かしら、と読みます)と呼ばれる、あの
蓬髪の鬘である。あの頭を振り乱すのがこの演目の見せ所
なのだそうで。
 まあそれはともかく。「頭」には、アフロディーテの
薔薇ではないが赤・黒・白の三色があり、それぞれに
意味がある。
 赤頭は元々人外の存在であることを表し(『連獅子』
に登場する親子獅子のうち、子獅子の方がこの赤頭)、
黒頭は人間が嫉妬や怒りから鬼になったことを意味し
(黒サガだぁっ!!(笑))、白頭は老人を意味する
(親獅子はこれ)。
 いやー、シオン様は原作絵では白抜き髪で白髪に見えた
から、もろこれがはまって大笑いなんだけどなー。